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彩遊記

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複雑系からみたまちづくり

『複雑』とは多数の独立した個が、相互作用している状態である。この相互作用というコトが、非常に重要になってくる。

この相互作用の豊かさが、システム全体の自発的な『自己組織化』を促進しているともいえる。複雑系やオートポイエーシスの知に関わると頻繁にでてくる言葉に『自己組織化』がある。『自己組織化』とは、『混沌としている状態や状況の中から自発的に秩序を形成すること』。

エントロピーの増大とは、不確定性、乱雑さ、無秩序の度合いが増える方向にむかうが、『自己組織化』とはこれとは反対に、生命に組み込まれた秩序への動向である。

まちづくりを例にあげると、個人の間の相互作用、小規模協議会の間の相互作用によってシステム全体が自発的に秩序を形成することである。

物質を例にあげると、水など『流体』は分子が非常に流動的でカオスの状態であるのにたいし、一方『個体』の氷は、凍結して動きがない。この流体と個体との間に、『相転移』の領域があるとされており、これを『カオスの縁』と呼んでいる。

『カオスの縁』は静的すぎず動的すぎない状況で、『情報が適度に保持される安定性』と『適度に伝達される流動性』とを絶妙のバランスでたもっていて、変化の前兆領域でもある。

たとえば、鹿児島であった甲突川の氾濫によるいわゆる『8・6水害』当時の混乱は、非常にカオス的状況である。

自己組織化がうまく機能した阪神大震災の例をあげると、大震災の直後の混乱、つまり非常にカオス的状況であったなかから、神戸の場合は『まちづくり協議会』が自発的に立ち上がり、うまく情報が伝達されるようになった。つまり『まちづくり協議会』は、『カオスの縁』にある状況と捉えることができる。

鹿児島の場合はどうだったのか?ぼくは、いまから10年前、鹿児島の中心を流れる甲突川の流域にある『草牟田通り会』のシンボル化に参加したことがあるのだが、住民のヒアリングをしていると、いわゆる『8・6水害』で氾濫した川の水による商店街の混乱の中から、誰からともなく相互扶助がはじまったという。商店街に絆がうまれたという。まさしくカオスの縁でうまれた『自己組織』である。


震災の直後は、情報も非常に混乱し、個人がそれぞれの買ってな動きのなかで様々な混乱がおこる。そんななか、『組織化』がはじまると、情報が正確に整理されて入り易く、静的状態へと進む。

『協議会』などはそもそも、非平衡状況にあるものであり、活動が停止することにより、やがては平衡状況へとなり、日常の繰り返しにもどる。

カオスの縁のような非平衡状況における、秩序は、物質とエネルギーが継続的に散逸することによって維持される『散逸構造』でもある。『カオスの縁』というアナロジーで示すことができる『協議会』では、存続する上で、そこに人、情報、テーマやビジョンなどが行き交っている状況が、理想的といえる。

複雑系からみれば、『まちづくり〇〇』などはカオスの縁から自発的に秩序を形成す『自己組織化』としての作用であるが、その自己組織化への触媒の按配で、良性の細胞が良性の細胞を駆逐する悪性の癌細胞にもなりうることは忘れがちである。「悪貨は良貨を駆逐する」 グレシャムがまっている。
by ogawakeiichi | 2010-02-19 07:45
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