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彩遊記

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誰のためのデザイン

f0084105_5432262.jpg『誰のたのためのデザイン?認知科学者のデザイン論』はデザイン系の世界では、読まない人はいない!くらいの名著?です。東京大学情報系の大先生からは、突っ込みを入れられる迷著でもあります。1990年出版の本なので、具体例は少々古典的ですが、とても示唆に富んでいます。たぶん、現在ちまたに出回るデザイン論のネタ本です。デザイン論に慣れ親しんだ人にとっては、あまりにもあたりまえのコトの羅列ですが、それもたまには温故知新ということでイイものです。

デザインはモノをつくることも大切ですが、まずは中心を取り巻く周縁のコトを知ることです。道具を使うのはどういう人なのか? どの程度、その道具になれているのか? 道具に関する知識は持っているのか? ユーザーはどういう目的で、どういう場所で、その道具を用いるのか? など。「誰のための?」と問う場合、ユーザー自身について知ると同時に、ユーザーが道具を用いる際のコンテキストの把握がデザイン行為のスタートです。





「誰のため?」が朧の中に輪郭らしいものが見えてきたら、『よいデザインの4原則』をアタマのアイデア回路にフックです。

認知科学者ノーマンは「よいデザインの4原則」というものを挙げています。

1、可視性:目で見ることによって、ユーザは装置の状態とそこでどんな行為をとりうるかを知ることができる。

2、よい概念モデル:デザイナーは、ユーザにとってのよい概念モデルを提供すること。そのモデルは操作とその結果の表現に整合性があり、一貫的かつ整合的なシステムイメージを生むものでなくてはならない

3、よい対応づけ:行為と結果、操作とその効果、システムの状態と目に見えるものの間の対応関係を確定することができること。

4、フィードバック:ユーザは、行為の結果に関する完全なフィードバックを常に受けることができる。

すなわち、『デザインするもの』と使う『相手のこと』を知るということですね。

相手がどんな人なのかを知り、相手の普段の生活を知り、相手のクセや体格や知識レベルや好みを知ることです。以前、某有名CIデザイン会社にいた親友に聞いたはなしなどでは、社長の奥さんの趣味まで調べ上げるとのことでした。おいおいCIAかぃ。

そうやって収集した情報は、まとまりをもつ『チャンク情報』整理しなければなりません。

情報に『まとまり』をつける整理=組織化の方法は、建築家のリチャード・ソール・ワーマンはたった5つの基準でズバッと提示しています。

1.カテゴリー
  商店やスーパーの商品分類、図書館の「総記」、業務内容(たとえば、総務、経理、営業など)
2.時間
  歴史年表、個人の手帳、博物館の展示構成
3.位置
  地形図、建物の案内図、人物相関図
4.アルファベッド
  辞書、電話帳
5・連続量
  小→大、安→高、低→高

というふうに、バラバラの情報資料をすっきり、くっきり可視化に近い状態へと持っていきます。
情報の組織化ですね。

情報を組織化することについて師匠・松岡は『情報選択の時代』でこう書きます。
===
情報は無限かもしれない。だが、それを構造化する方法は無限ではない。そして、その情報を収めるべき場所があると、その情報ははるかに役にたつものとなる。どの方法を選ぶかは、自分が語りたいストーリーによって決められる。選択方法が違えば、情報は異なったふうに理解することができる。それぞれには多くの変形版が存在するが、主な選択肢の数は有限だと認識していれば、選択が必要な場面でびくびくしなくなる。
===
『主と客の立ち居地』と『文脈』をしっかり捉えて、そして『構えろ』ということですね。

さて、見た目のデザインではなく、対象をデザインする上においてデザインの構造全体を考慮しながらユーザーの立ち居地にいおて、使い勝手を高めるデザインをしていく上で欠かせないのが、「情報アーキテクチャー」という方法論です。(※アーキテクチャーとは「構造」や「建築」といった意味で、情報をひとつのまとまりとしての「チャンク」でできた建築物のように組み立てていくアプローチ。)

ユーザー研究に関する第一人者、ヤコブ・ニールセンはユーザビリティーを評価するポイントを5つ上げています。

1・学習しやすさ
2.効率性
3.記憶しやすさ
4.エラーの少なさ
5.主観的満足度の高さ

5つの評価で問題点を洗い出すわけですね。ユーザビリティーテストの必要性とは、「使うことのプロ」と「作り手のプロ」とのすり合わせでもありますね。

その方法としては
◎作業の観察 : 黙ってユーザーの行動を見てみるデザインしている
◎シナリオ法 : プロトタイプを紙などに表現して含まれる機能を減らしてみる
◎思考発話法 ; ユーザーに使ってもらいながら感じたことをありのままに語ってもらう
◎ヒューリスティクス評価法 ; 過去のユーザビリティー・テストから発見されたデザイン上の経験則に照らし合わせて分析を試みるといったものがあります。

ここまでやって、ほんまもんのデザイナーです。
これはデザイナーたる『主』が、ユーザー『客』と意識、または無意識を交差させる。
利休の時代でいえば『茶禅一如』の世界でもあります。
ここでいう『客』は、詳しく言えば『デザインを発注する客』と『いわゆるユーザー』とがありますが、ここでの『客』はそのどちらにも該当するとしておきましょう。
今回は、『誰のたのためのデザイン?認知科学者のデザイン論』に沿って私見を述べますので、『デザインを発注する客』とデザイナーとの関係に関しては、そのうちしっかり文章化してみようと思っていますが、『主』と『客』の間に、ときどきアドバイザーとかブローカーとかディレクターとか、気がつけば、ちょこんとすわる『間人』、けっこう威張ってすわる『間人』がいますが、大プロジェクトでもない限り、褒めれたものではありません。主たるデザイナーは優秀なアドヴァイザーであり、ディレクターであるべきです。客としっかり向き合わねば、“瀬”は渡れません。

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イタリアでは『デザイナー』という言葉の代わりに、『プロジエッティスタ』という言葉がよく使われています。全体を計画し、前へ進めていく人という意味です。つまり、イタリアにおけるデザイナーという仕事は、依頼されたモノに美しい色やカタチを与えることではなく、また特定の分野に限られた専門業務でもない。『何をつくるか』を提示し、現実化していくことがその仕事の真髄なのです。
『西村佳哲(1999年12月号・デザインの現場)』
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さすが、いいデザインを生み出すイタリアですね。
デザイナー自ら、全体を計画し前へすすめる。
この辺にイタリアデザインの秘密がありそうです。

デザイナーたるもの、個々の活動やグループごとの『たこつぼ』に陥りやすいところを、『ノード(結節点)』をもってネットワークコミュニケーションさせながらシナジー(相乗)効果を創発し。いままでばらばらだったものに、思わぬ関係点を発見しながら、ともにあたらしい「企て」を進めていけるような『ノード』をデザインすることです。

そのデザイン行為自体が、自分やコミュニティーにおける新たなデザインの地平が見えてきます。モノからコトのデザインですね。

情報をデザインすることは、なによりも私たちの身の回りにある膨大なデータを価値のある、そしてわかりやすい情報へと変換していく作業です。

データは、他のデータとのつながり=関係をもつことによって情報へと生まれ変わっていきます。言い換えれば、データはあるコンテキスト(文脈、情況)のなかに置かれることによって、理解できる情報にしていくということです。

デザイン、その中でも情報デザインは、此処のデータやコンテンツ(内容)よりむしろ、コンテキスト(文脈、情況)を組み立てる作業ということでもあります。

身の回りにあふれるデータ、あるいはコンテンツに『チャンク』をつけ、そこになんらかの秩序=コンテキストをつくりあげる生活上における行為は、実はどれも情報のデザインです。夕飯の献立つくり、本棚やクロゼットの整理、買い物のリストアップ、旅行の計画つくり・・などなどどれもそうですね。

重要なのは技術そのものではなく、自分たちの生き方に直結するものとして、メディアをいかに使いこなすかです。つまり広い意味での『使い方・意味づけ方』の文化を自分たちの活動のなかから創りだしていくことですね。

私たちは、こんはふうに、モノのかたちをとった情報を、日常的な経験のなかでフィルターにかけて分類し、整理しています。人によって上手下手はあるにせよ、これらの行為を日常のなかでなんとかこなし、暮しているのです。

要するに、日常生活のなかに埋め込まれれている情報のデザインは、私たちにとって重要な『生きるチカラ』の一つなのです。その『生きるチカラ』を創りだすのがデザインなのですよ。。
お・わ・り

参考:平凡社新書・情報デザイン入門(渡辺保史)


謝謝大家
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by ogawakeiichi | 2009-03-15 05:44 | 情報とデザイン
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