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彩遊記

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アブダクション

f0084105_23293121.jpgアインシュタインは「経験をいくら集めても理論は生まれない」と言った。観察によってデータをいくらたくさん集めても、既存の理論の検証が進むだけである。従来的帰納法からは斬新な新理論、イノベーション(あらたな価値の創造)は生まれない。論証を行うだけである演繹法からももちろん、新しいアイデアや新しい理論は生まれてこない。

記号論の王様、チャールズ・パースは人間の推論には演繹と推論とアブダクションの3つの形式があると指摘した。

アブダクションとは、説明すべき事実に対してたくさんの仮説を立てて、その中からもっともらしい仮説を選び出す拡張的な推論プロセスである。たしか松岡正剛は『当て推量』と言い換えていたような気がする。

パースは分析的推論として【演繹】があり、拡張的推論として【帰納】と【アブダクション】があると整理した。アイデアや新しい仮説はどうやって生まれるのか。そのあたらしい考え方がアブダクションである。

ウィキペディアによると、帰納(きのう、Induction)法とは、個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則を見出そうとする推論方法のことで、対義語には演繹法がある。演繹法においては前提が真であれば結論も必然的に真であるが、帰納においては前提が真であるからといって結論が真であることは保証されない。

アブダクションは帰納に含まれるものであるが、帰納のなかで創造性の高い拡張的推論であり過謬性の高い、論証力の弱い推論でもある。だが、パースによると既存の枠組みを超えるイノベーション(あらたな価値の創造)を生み出すために不可欠な、もっとも優れた推論だと高く評価した。
ここで、思考のプロセスである代表的な演繹と帰納を整理しておく。

●演繹(deduction)
-----------------------------------------------------------------
<前提1> AならばBである。 

<前提2> Aである。

<結論> Bである。



●演繹ではない推論(広い意味での帰納 induction)

1.枚挙的帰納法(狭義の帰納)
-------------------------------------------------------------------
<前提1> a1はPである。

<前提2> a2もPである。

<結論>
(たぶん)全てのaはPである。




2.アナロジー(類推)
--------------------------------------------------------------------
<前提1> aはPである。

<前提2> bはaと似ている。

<結論>
 (たぶん)bはPである。


3.アブダクション
------------------------------------------------------------------
<前提1>
 aである。

<前提2>
 Hと仮定すると、aがうまく説明される。


<結論>
 (たぶん)Hである。


「アブダクションは最初にいくつかの仮説を思いつくままにブレストするように提起する示唆的な段階と、それらの仮説のなかからもっとも正しいと思われる仮説を選ぶ熟慮的な推論の段階から成り立っている」

仮説はどこから生まれるのか?仮説は頭の中から自然と涌いてくるものだ。そこには何の法則も根拠も見えない。そこには、ただただ思いがけない創造的な飛躍がある。

なぜヒトは「ひらめく」ことができるのか?。なぜ人間は創造性を持っているのか。それは進化生物学的に説明がつくとアブダクション研究者は考えた。生きていくための問題をとくためには発想力が必要だ。アブダクションは人類進化の過程で自然に適応するために人間精神に備わった「自然についての正しく推測する本能的能力」であると考えた。

アブダクションでは、そうした「示唆的段階」で生み出したたくさんの仮説(アイデア)の中から、

1 もっともらしさ もっともらしい理にかなった仮説
2 検証可能性 実験的に検証可能な仮説
3 単純性 より単純な仮説
4 経済性 実験に経費、時間、思考、エネルギーが節約できる仮説

という基準で、もっとも正しいと思われる仮説を選ぶ熟考的段階に進んでいく。アブダクションという厳密でない推論こそ人類の叡智の中核をなす能力と言える。人間には創造性が進化の過程でビルトインされている。


参考引用サイト・http://www.ringolab.com/note/daiya/
by ogawakeiichi | 2014-08-27 11:21 | 情報とデザイン
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