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彩遊記

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科挙とカンニング

科挙は六世紀、隋の時代から二十世紀はじめの清の時代まで実に一三〇〇年もの間、中国で続いた官吏登用試験だ。

いってみれば受験戦争の元祖みたいなもの。

試験は漢詩や四書五経と呼ばれる古典がお題になった。

浅田次郎氏の小説「蒼穹の昴」は中国清朝末期の科挙が描かれているので原作を読んだことのある人も多いと思う。

科挙の制度は複雑で、また年代により違いがあり一筋縄ではいかないのだが、一般には最初に「郷試」とよばれる地方試験があった。

それに合格すれば「挙人」と呼ばれ不逮捕特権を与えられた。

郷試に望む受験生は一族の期待を一身に集め、三日三晩にわたり独房みたいなところで受験した。  

これに受かると、わが村のヒーローだ。

中国で農村にスケッチに行くと、まれに一般の村とは違う、気品のあるオーラを放つ立派な門や白壁のある村に出会うが、そんな場所はたいてい科挙の合格者を出した村だ。

郷試に合格するだけでも大変なことなのだが、次に中央で行われる「会試」に合格すれば一族一門は言うに及ばず、その村、郡、県の利益をもたらす大事件、大吉事である。

生まれた家は名家となり、その一族は地方の名門になる。

なにはともあれ合格すれば、それに見合う厚遇が待っていたので一族や有力者は才能のありそうな子供を見つけこれを支えた。

科挙に合格するということは唯一、誰もが特権階級になれる道でもあった。

一次、二次に合格した超エリートは最後に、皇帝の前で「殿試」とよばれる試験に臨む。

科挙のこの三つの各試験において全てトップで合格することを「三元」という。 麻雀好きの人はご存知、これが麻雀の役満「大三元」の由来でもある。

私の暮らした桂林の街中の城門には、オラが町の誇り「三元」が出たことを記念する大きな石碑が掲げられていた。

だれもが特権階級になれる熾烈な科挙での競争は、数十万字を書き込んだ下着も残るカンニングの歴史でもある。

科挙の本家中国は、今でも受験や試験は熾烈を極め、そのためカンニングも巧妙でハイテクだ。

耳に埋め込むタイプのイヤホンとクレジットカード型の受信機をセットに販売し、回答を近くのホテルから送信していた業者が摘発されていたこともある。

私の勤務していた大学では、試験の時期になると「不正をしないように!」という横断幕やポスターが掲げられ、構内の掲示板には、カンニングが発覚した学生名と退学通知を大きく張り出していた。

しかしそれ以上に、試験シーズンのこの時期は、あれやこれやの人脈探しが盛んであった。

今回、日本の大学入試におけるカンニング騒ぎは、インターネットを使った手法が注目されたのか、大学や大学間での処理を越え、警察沙汰にまでなった騒動に、なぜか少々心が痛むのでもある。
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by ogawakeiichi | 2011-03-04 10:16 | 南日本新聞コラム
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