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彩遊記

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風雨橋

昔、昔お世話になった「さるさる日記」が停止になるそうで・・過去に南日本新聞連載原稿をここで保存しておいたのですが、こちらへ移しておきます




■風雨橋=9月1日南日本新聞掲載=

桂林から山を越え“三江”の街に着くと、匂いが違う、光が違う。ほこりの舞うバス停には、バイクを改造した三輪車を運転するおばちゃんたちが、着いたばかりのお客を奪いあうように客引きを始めた。そのおばちゃんの、聞き取りにくい方言を、なんでも知ってるんだぞ、というふりをしながら騙されないよう、値段交渉。

向かう場所は“風雨橋”やっと乗り込んだ相乗りの三輪車は、あひると鶏、穀物の麻袋と人で、一寸たりとも動けない。斜め前に座る、生まれたばかりの赤ん坊を、大切そうに毛布で包んだ、ミャオ族の、母親が妙に気になる。まだ、10代半ばにしか見えない幼い顔の母親に、チラッ、チラッと目を向けながら、そのあどけない顔と、美しい衣装、その髪型を、脳裏に焼き付けようとなぜか努力する。

力のないオート三輪は、山道を喘ぎながら登っていく。カーブを回りこむたびに、時代を遡るように姿を変えていく村々の、風景に、一抹の不安とも、期待ともつかぬ心境になりながら、トン族の集落の入り口である“風雨橋”へと到着。“風雨橋”は雨の多いこの地方一帯に点在する寺院のような屋根をもつ橋だ。その橋の一角は集会場として、橋の欄干に沿った両側は市場として使われている。
 
まわりはすっかり黄昏た。人影もまばらだ。風雨橋の中ほどで、腰までありそうな長い髪を、頭の上でひとつに束ね、袖元に細かい刺繍を施した、トン族の黒い民族服を着た女の子に気がつく。畑仕事の帰りだろうか、収穫物を入れた竹かごを傍らに置き、橋の欄干にもたれ、携帯電話の真っ最中だ。

相手は誰だろう‥駆け抜ける風に吹かれながら、アジアの片隅、そのまた隅っこから、コミュニケーション。テレビCMのような光景だった。
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by ogawakeiichi | 2011-06-23 08:17 | 南日本新聞コラム
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