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彩遊記

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フェアトレードと内モンゴル

昨年から、鹿児島大学留学生センター小林研究室で「フェアトレード」の非常勤講師として、授業を手伝っている。

近頃、やっと「ソーシャルビジネス」とか、「フェアトレード」という言葉を聞くようになってはきたものの、まだまだ一般の人までは浸透していない。

「フェアトレード」をごくごく簡単に言うと、「人と地球にやさしい貿易の仕組み」のこと。

現在、世界の所得配分をピラミッドにしてみると、世界の人口約70億人のうち、ピラミッドの底辺には40億の人がいて、世界の人口の3分の2は、一日8ドル未満で暮らしている。

「フェアトレード」はそんな社会的・経済的に立場の弱い人々の問題や、環境などの問題を含め、新しい経済秩序の仕組みを創ろうとしている。

しかし、そこには、利権あり、ニセモノあり、また思想だけが先走り、現実とはかけ離れた絵に描いた餅ありと、なかなか一筋縄ではいかないのだ。

これを理系、人類学、デザインなど専門分野の違う、さまざまな国籍(コロンビア、パキスタン、バングラディシュ、日本)の先生たちが、学生と共に考えていこうとする多様で多彩な留学生センターならではの授業でもある。

ところで、デザイナーのわたしに、なにができるのか、当初は悶々としていたのだが、発想を変え、これをデザインだと思い、とらえてみることにした。

まず対象となるモノや仕組みを観察して、キーワードを探す。そこから商品をつくり、流通の仕組みを考え、人と人が繋がる仕組みまでを考える「デザイン思考」という方法で、学生たちと「フェアトレード」にアプローチしてみることにした

話は一転するのだが、内モンゴルにおいて、砂漠化を防止するため、また、地域住民の貧困対策のため、緑化事業をおこなっている日本人がいる。

しかし、継続には資金がいる。そこで、目をつけたのが、内モンゴルの岩塩。その販売と普及をとおし緑化事業の継続と貧困対策という「人と地球にやさしい貿易の仕組み」だった。

8月中旬、留学生センターの小林先生を筆頭にフェアトレード海外研修の一環として14名の学生たちとともに、内モンゴルの現場を訪ねることになる。

研修は、現地に赴き、岩塩採掘現場を訪ね、その日本人が住民や行政と地域の人々と協力関係を築いていった方法などを観察して、マスメディアだけからは伝わりにくい異文化を体験しながら、見て、触れて、現場や流通をからだで受けとめ、フェアトレードを考えるというものだ。

鹿児島から福岡、青島、北京寧夏回族自治区の銀川を経由して30時間あまり、最初の現場である360度の地平が見渡せる岩塩採掘現場にやっと到着した。

内モンゴルの空は天高く青く澄み渡り、まぶしいぐらいに真っ白な筋雲が、筆のような痕跡を残していた。

 
by ogawakeiichi | 2011-09-03 14:52 | 南日本新聞コラム
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