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彩遊記

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遊牧民から見た世界史

遊牧民から見た世界史_f0084105_1553110.jpgきのうは、トライアスロンの師匠主催の錦江湾横断個人遠泳大会。師匠に請われて桜島小池海岸から磯海水浴場の中間点に船を止めたチエックポイントを担当した。

スタートした泳者はまず、中間地点に浮かぶ2号船を目指す。そこで泳者が2号船のヨコを通過したかをチエックするのが僕のおもな任務だったのだが、選手も運営スタッフもドカ灰と大潮前日の潮流に翻弄されてアップアップ。大潮に流されてチエックポイントを通過できない選手が続出。でもでもなんとか無事に終わった。こんなときは、運営側の度胸が試される。人命がかかってる分、それはそれで大変だ。

ところで、すっぽらかしていたこのブログもぼちぼち再開していこうと思ってるだが、遊牧民やら、南北朝やら、マーケティングやらへと相変わらす多様に嚆矢はむかっているものの、なにかが邪魔してぐぐっと入り込めない日々が続いた。

その邪魔している正体がわからないまま、とにかくキーボードを打つことにする。

こういうときは身体性から、リズムにのせていくに限る。

さてさて、どこから入ろうか?

う~ん、やっぱり、先月鹿児島大学の学生を引率したモンゴル研修のほとぼり冷めやらず、で、松岡さん、最近の千夜千冊「スキタイと匈奴 遊牧の文明」をトレースしながら遊牧民を攻めてみたい。

↓  ↓  ↓

ユーラシア大陸には、古代より狩猟と農耕と牧畜が組み合わさり、そこを「草原の民」と「オアシスの民」が動きまわっていた。

草原の民とオアシスの民は「面」としての遊牧社会と「点」としての都市社会を形成するようになる。活動者はパストラル・ノマド(遊牧民)。

彼らは、夏営地と冬営地を替えながら、それぞれの地に、都市や王国や帝国をつくってきたのだが、そのルーツのひとつにスキタイがある。

スキタイは、古代オリエントから青銅器文化や鉄器文化を吸収し、北海北岸に強力は遊牧国家を形成した。

古代ギリシャのヘロドトスは「歴史」のなかで、「アケメネス朝ペルシャの大王ダレイオスが、紀元前514年に大掛かりは北進を敢行して、スキタイなるものを討った」と書いた。

そのころのギリシャ人の地理觀念では、ボスポラス海峡とダーダネルス海峡の北側に広がる土地が「世界」(ヨーロッパ9というもので、その南側の東が「アシア」(アジア)。西側が「リュビア」になっていた。

スキタイはその「世界」(ヨーロッパ)の北側に攻め込んだ。

そこでアケメネス朝の大王ダレイオスと、その子供であるクセルクセスは黒海沿岸を北上し、ドナウ川をも渡ってスキタイと刃を交えるため進んでいった。

しかし、遠征は失敗。その後、ペルシャはギリシャにも負ける。

かくしてアケメネス朝は次のササン朝ペルシャに移っていくのだが、このスキタイこそは後の中央アジアを席巻する遊牧国家の母系のひとつとなった。

遊牧的ユーラシアの世界を語るには、既存の国や王朝や民族の枠組みにとらわれない見方によって、かれらの結束や連合の要諦が強くなったり弱くなったりするその具合を観察することがきわめて重要になる。そのルーツがスキタイにあった。


杉山正明はスキタイについて、今日の国家や民族でしか歴史を見ない現代人に対して、スキタイは国家にも民族にも融通無碍で、たとえばギリシャ系スキタイにもペルシャ系スキタイにもなりえて、それでいて国家や民族を越えた大型で広域の政治連合体のようなものを形成しれたと考えた。

杉山正明はそのことを、「かぎりなくコンフェデレーションでありうること」という。連結的で、連合的だ。

スキタイはどうやら、紀元前8世紀ころにサルマタイとよばれる遊牧民と争って黒海北岸に移動してきたものと見られる。

サルマタイもスキタイものちイラン語を話す遊牧民として知られるのだが、その場合はまとめてイラン系遊牧民と呼ばれる。

ペルシャ人たちはこれを「サカ」と汎称した。サカは中国語では塞となる。

スキタイは民族名とも人種名とも、王国名とも語族名ともいえない。広く言えば、種族名。

そこには西から順に農耕スキタイ(穀物を転売して通商する)、農民スキタイ(土地を決めて生産に従事する)、王領スキタイ(スキタイたちのリーダー9などがいて、おそれくは地域・生産・居住の区別を越えたかたまりとしてのスキタイと、しくみとしてのスキタイが多様にいたのだろうと思われる。

そうしたスキタイに替わって勢力を伸ばしてきたのがサルマタイだった。黒海北岸から南ロシア平原をしばらく制圧したようだ。

サルマタイも、中央アジアの草原の東に現れた「匈奴」によって、これがどこかで「フン族」となって、サルマタイの緩やかな要諦を吸収してしまった。


つづく・・
by ogawakeiichi | 2011-09-12 15:53
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