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彩遊記

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時間のデザイン‐16のキーワード

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紙媒体、主としてグラフィックデザインを生業としていた当時、工業系や建築系のデザインにはなかなか立ち打ちできなかった。職人派建築士の書いた設計図にデザイン的な視点でディレクションするだけで、“手を動かし口も動かすデザイナー”を目指していた当時にとって、資格制度である建築デザインには忸怩たる思いが湧き出ることもあった。

高校時代デザインに目覚めた我が長子に、デザインやるなら建築家だよと示唆したこともある。蛇足だが、その後、長子はデザイン工学科の建築へ進み、磯崎新の孫弟子で一級建築士だ。

この本は早稲田大学の建築科、渡辺仁史研究室が設えた。早稲田の建築といえばさっと思い浮かぶだけでも吉阪隆正・石山 修武・栗生明・内藤廣、最近では 坂口恭平など建築界のスターが揃う。

昨今デザインと呼ばれるものが氾濫しているが、そのなかでも「都市・建築デザイン」はデザイン界の上位レイヤーに君臨している。長時間にわたりヒアリングし、予算とアイデアのなかで、数次元で対象を観察、数字(記号)に置き換えて、構造から構成までをやってのけ、そのうえ熾烈なプレゼンテーション、納期というリアリティーを通過する能力が求められているからだろう。平たく言えば、建築できればどんなデザインもできるということだ。

早稲田大学の渡辺研究室では、研究課程や成果を文字としてだけではなくダイアグラムとして可視化してきた。そのなかでダイアグラムをもっとも鮮やかに表現する切り口として「時間」というキーワードにアタックした。

わたしたちの生活の中には人間・空間・時間という3つの大切な「間」がある。これまで建築計画では人間と空間という世界が主流であったが、情報メディア技術によって時間に対する視点が空間デザインに要求されるようになってきた。

人間を時間という概念で捉えると、その行動の推移が空間の状態を反映していることがわかる。また、空間を時間という視点で捉えると、そこには情報が不可欠であることが明らかになってくる、さらに人間と空間とのかかわりを評価する指標として健康が挙げられる。このように3つの間を通して建築の世界を見直していこうとするのが本書である。

さて時間の概念を導入して、新しい空間デザインを試みるとはどういうことだろう。

我々の生活を鑑みると(いつ、どこで、どのくらい、なにを、どうかわったか)という日々を過ごす。その行動を視角的表現していくことが時と間の融合にあるあたらしい空間デザインだ。

膨大な行動調査のデータのなかから「変化」を捉え、動きの履歴の中に共通する特徴や、ルールを見つけ、そのルールうぃ汎用的なモデルにして「デザイン」を立ち上げていくこと。それが「時間をデザインする」ということである。

この本では16の視点から時間を読み解き眺めている。
なお、→は、私的に記した要素のエキスなセンテンス。

◆16のキーワードーーーーーーーーーーーー

●瞬間→際立つ一点に注目する。
●履歴→履歴を振り返り乗り越えていく
●同時性→その場の状況により即興的。
●速度→意識の発火を促すサイン計画
●一時的→無常、一期一会の仮囲い
●持続→サスティナビリティーを支えるシステム
●遷移→文脈をよむ
●進化→時間の「からまりしろ」から生まれる
●シークエンス→軌跡から意図や無意識を読み解く
●軌跡→行動をデザインする
●転換→表裏一対のデザイン
●リズム→都市の奏でるリズムを再編する
●蓄積→集めた情報から新しい関係性
●密度→疎と密を作りだし、情緒をくすぐる
●予測→シュミレーションしてみる
●歪める→伸び縮する時間の襞を表現してみる。

お・わ・り





by ogawakeiichi | 2014-08-20 17:23 | 情報とデザイン
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