ブログトップ

彩遊記

ogawakeiic.exblog.jp

園林設計

中国園林の伝統手法-園治より

園林とは中国語で読んで字のごとく園林のこと、日本語でも同じ意味なのだが、
僕がはじめてこの言葉を聞いて以来、数年間は
園林とは果樹園のことだろうとおもっていた。思い込みとは恐ろしいものだ。
数年間もまちがったまま、会話していたのだ。
じゃあ、これまでの会話はなんだったんだ。あれれ・・

園林という単語はいま僕の前に頻繁に現れる。
当然正確な意味も覚えた。ぼくらはどちらかというと造園という意味でつかっている。
頻繁にこの単語が現れはじめたのは
桂林市園林局設計院にいる、建築家と知り合ってからだ。
彼は、以前、あの丹下健三事務所にいたという。
先日、彼の口から、中国式庭園と日本庭園の特徴や区別の話題が語られた。
自分で言うのもなんだが、その一言一言が、ぼくの脳みそはスポンジが水を吸い取るように
グングン吸収していく。

普段だったら頭の中を通り過ぎていく言葉も、シナプスの網に引っかかる確率がめちゃめちゃ高い。
きっと、ぼくの祖父が造園家だったせいもあるのだろう。
庭師としてのDNAが少しは残っているのかもしれない。
大好きだった祖父のこともあって、いつかは、造園についてまとめてみたいと思っていた。、
いい機会だ。中国式庭園からまとめておこうと思っている。

f0084105_0422830.jpg中国の伝統的な造園手法を描いた本に「園治」というものがある。
「園治」は明朝末期に呉江の人、計成が中国庭園を造園を系統的に著わした全3巻の書物だ。
内容は園林作庭技法の骨組み・要点などである。
この本を書いた“計成”は、造園家であり、また詩人・画家でもあった。
園林作庭技法の要点は
1.相地(園林造形手法)
2.立基・屋宇(配置計画・設計手法)
3。隔・曲(園林造形手法)
4.綴山(左が木偏)・選石(園林造成素材)
5.「借景」(眺望手法)
の5つの要点に分けられる。

漢字がずらっとならぶと、わかりにくいので簡単に書いてみる。

まず、造園を造りはじめるまえに、その土地の地形をじっくり観察する。
地形の高いところは、さらに盛り土をして高くし、低い場所は、さらに掘り進めでいく。
造園をつくり始める前にもともとある石や池、樹木は、なるべくその状態を大切にし
散在しているものは、集約して、自然の景観を強調する。

次に、中心となる場所を決め建物を配置する。
次にいくつかの主要な眺望視点に、その中心となる建物に対して景色となるように
亭などの小型の建築物を配置し、樹木や水、石などで風景を整える。

主要な建物に対する景色の中心を対庁といい、中心の建物から廊下でぐるりとつなぐ場合も多い。

建物と建物をつなぐ廊下を歩くと、コーナーを曲がったり、門を通過するごとに
風景場面がガラッ、ガラッと変化する。日本庭園のながれるような見え隠れの美とは対照的な構成だ。


まとめ
1.相地(園林造形手法)とは、
「因地製宣」ー原地形を利用し、その地形にもとずいて、造成する。
すなわち、低いところはより低く堀り、高いところはより高く積み、石・水・花木
など現状を基にして、散在しているものは集約し、自然の景観を強調する。
この手法によって、江南園林の理想とする「崇阜広水」(高い山の姿と広い水域)の内に、
その土地のもつ特質を表現していく。

2.立基・屋宇(配置計画・設計手法)とは、
「一宅廬、二草木、三水石」まず、中心となる建物の位置を決め、次にいくつかの主要な眺望視点に、対をなす景色となる

亭・台・楼などを配置し、花木。水。石などで修景していく。

f0084105_0391371.jpg対景の中心には必ず、対庁が設けられる。対庁は「堂・房・斉・館・楼・閣・亭」などであり、それらを、「廊」でつなぐ場合も多い。廊は連絡路であると同時に主要な風景への案内路でもあり、また景色を区切る機能も果たしている。これらは、総て「透・軽」の造形を本質としている。

花庁と対庁はそれぞれ眺望対応の関係にあり、それらは交錯して「相互対景・交叉対景」をつくり、相互に景観の構成要素となる。それらの構図は理想郷である山水画の「画鏡」でなくてはならない。

3。隔・曲(園林造形手法)とは、
歩移景異ー園林は庁から堂へ、閣へと巡り歩く回遊式庭園である。日本の回遊式庭園が池を中心に「ながれるような見え隠れ」の構成であるのに対して、中国庭園の表現は、景観の一駒、一駒の対比的変化をその構成の基本としている。

「隔・曲」はひとつの空間を、建屋・壁面・石屏・洞・廊などで多層な風景区に分けて構成する手法であり、広い水域もこの手法によって変化のある景観を構成することができる。これらの景観区はぞれぞれに特徴があり、大小の空間の配置も、疎密とりまぜてリズミカルな変化によって構成されている。

「園中有園」「園中有院・「湖中有湖」であり「別有洞天」(もうひとつの天地)の連続である。「園必隔」「水必曲」の手法によって、多層な変化と対比の中国園林は構成されている。日本庭園の徐々に変わる風景の回遊式庭園をアナログ式とすれば、場面ごとにガラッ、ガラッとまったく違う風景が現れる中国式庭園はデジタル式の表現と言うことができるだろう。
   

4.綴山(左が木偏)・選石(園林造成素材)とは
「奇峰異石」ー園林の集中する都市、特に江南の地方は平坦な大地であり、園林構成の「立意」には、中国山水画にみられる、「奇峰峻嶺」・「峭壁飛瀑」など険峻の名勝が好まれた。
したがってその構成要素は「奇石」が主体となり、千姿百態の奇石に「奇」・「勢」を求め、
それが、理想郷の表現にもっともふさわしいとされた。

垂直方向の構成を重視した「畳」・「堆」。
堆石の上に亭を設けて、「登高遠望」の場とし、畳石に洞をほって「沈思黙考」の場所とした。
日本庭園の築山は、庭園の修景要素として作られ、人が登ることを目的にしていない。そのため人間の尺度によらずそこにあしらわれる諸要素の尺度統一によって、全体の風景を表現した。それに対し中国園林の綴山(左が木偏)は景観の目的に加え、「登」を対象にしているため人間尺度を基準として、その構成は現実的な自然局部の集積を原則としている

石の姿は、「透・痩・皺・漏」に類別され、これら選石の基準に、中国園林構成要素の際立った特質をみることができる。

5.「借景」(眺望手法)
遠借・隣借・仰借・俯借
遠借は高所から見渡す群山。野原。川湖などの借景。

隣借は近隣・隣接庭園などの塔・楼など、主として建築風景の借景。漏花窓より隣景を借りる場合もある。

仰借は雲・光・月・樹木・塔楼などの借景。

俯景は高所より隣接の庭園を見下ろす奪景ともいう。
《参考資料・パブリックデザイン事典:東京芸術大学環境デザイン研究室・稲次敏郎》
[PR]
by ogawakeiichi | 2006-10-09 17:26 | 中国デザイン
<< 正剛追随記・文化大革命と現代中国3 南日本新聞コラム・大山子芸術区 >>