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彩遊記

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某イヌの記憶

デザイナー修行時代のことだ。
青信号の点滅する深夜。帰宅途中の交差点で、信号機の向うにいるイヌと目があった。
交差点を渡ると、そのイヌは尻尾をふる。
首輪はしているものの、迷いイヌか捨てイヌらしい。後をついてくる気配だ。
刺激しないよう、おまえなど知らないという態度で歩く。
適当なところで帰って行くだろうと思っていたが、尻尾をふりながら後をつけてくる。
家の玄関前までついてきた。
次の朝、玄関を開けると、そのイヌは「おはよう」とばかりに尻尾をふる。
まあ、いいや、仕事にいっている間に居なくなるだろうと思った。
だが、帰ってみると玄関の前に寝そべっている。
それ以後、コイツに付きまとわれることになる。
餌など与えたこともない。(ほんの一度だけ、パンの端っこを与えた。)
ちょこまかとついてくるこのイヌを
飼い犬と思われたくないので、聞かれもしないのに、
通りすがりの人にこのイヌとはなんの関りもないことをアピールする。
日が経つにつれ、仕事中、イヌのことがあたまを過ぎる。
ある日、帰宅するとアイツがいない。
ほっとすると同時に、一抹の寂しさ。
気がつくと、隣の家のベランダにいた
。鎖で繋がれた飼い犬になっていた。
「ほーら、俺について来てよかっただろうが~」と近づくと、

「ウーッ!ワン」と吠えられた。

ただそれだけのことなのだが・・・。
by ogawakeiichi | 2008-07-03 22:58 | 只記録
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